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動植物の分布―植生―

植生

低地帯から高山帯の多様な植生が見られます。
植林や代償植生が広く分布していますが、高標高地には自然植生がまとまって残されています。
原生自然環境保全地域における森林植生をはじめ、多くの特定植物群落や社寺林などが注目すべき植物群落および植生等としてあげられます。
 本町は約97%が山地で、大井川の本流や支流に沿って段丘・低地が細長く分布します。山地は大部分が森林で占められていますが、二次林などの代償植生(さまざまな人為的影響が加えられた後に成立した植生)や植林といった、人との関わりの中で成立した植生が多く分布します。一方、段丘・低地は住宅地や耕作地に利用されています。
 また、本町は標高約200〜2,600mと垂直的な広がりをもっているため、低地帯、山地帯、亜高山帯、高山帯の4つの主要な植生帯がすべて分布し、各植生帯特有の自然植生が山地や河川に残されています。特に高標高地には自然植生がまとまって残されており、大井川源流部は本州唯一の原生自然環境保全地域に指定されています。

環境別の植生
山地
 高山帯に位置する本町の最高地点・光岳(標高2,592m)には、高山帯で最も代表的なハイマツ低木林が分布し、ハイマツの群落として南限にあたります。
 亜高山帯(標高約1,800〜2,500m)には、低標高地に比べると自然植生が多くみられ、シラビソ、コメツガ、トウヒなどの常緑針葉樹林が主体となっています。一方、森林の伐採によって生じた代償植生として、先駆性の高いダケカンバやミヤマウラジロイチゴなどからなる群落があります。
 山地帯(標高約800〜1,800m)になると、植林や代償植生が多くなってきます。植林はスギ林などの他に、カラマツ林もみられます。代償植生は落葉広葉樹林のシデ林やミズナラ林が主となっています。自然植生は常緑針葉樹林のツガ林や落葉広葉樹林のイヌブナ林がよく目につきます。渓谷にはシオジ林が局所的に分布し、渓谷林として美しい景観です。
 低地帯(標高約800m以下)になると、スギなどの植林やコナラ林などの代償植生が大部分を占めるようになります。自然植生は少ないものの、尾根部に発達する常緑針葉樹林のモミ林が比較的よく残っています。また、渓谷林としてイロハモミジやケヤキの樹林がみられます。

段丘・低地
 大井川に沿って細長く分布する段丘・低地は、ほとんどが住宅地や耕作地などに利用されています。耕作地は茶畑が主ですが、水田も小規模ながら南部に点在しています。

河川
 大井川は急勾配で河道がきわめて不安定な河川であるため、河川敷に砂や礫の自然裸地が広がりますが、やや安定した所では冠水や急流に強いヤナギの高木林、ツルヨシ草地などの河辺自然植生がみられます。


光岳の環境別植生図

高山帯のハイマツ低木林
高山帯のハイマツ低木林
低地帯のスギ植林
低地帯のスギ植林
段丘・低地の茶畑
段丘・低地の茶畑

植生図
植生図

【資料:自然環境情報GISデータ 第2-5回自然環境保全基礎調査・現存植生調査】

注目すべき植物群落・植生
 環境省の「特定植物群落」「現存植生図における自然植生」、静岡県の「特定植物群落」「静岡県自然環境基本調査における調査対象社寺林」などから、本町の注目すべき植物群落・植生を選定しました。
 その結果、原生自然環境保全地域における森林植生をはじめ、多くの特定植物群落や社寺林などが注目すべき植物群落および植生等としてあげられます。

本町の注目すべき植物群落および植生等
群落・植生の名称 概要
1 梅地アカマツ学術参考保護林(*1) 胸高直径70cm、樹高30mを超える見事なアカマツの樹林で、周囲の若いスギ植林の中に、そこだけ異質な世界のように見える。大井川流域で最も樹木が大きく立派なアカマツ林として貴重である。
2 接岨峡のモミ林 接岨峡の急峻な斜面の尾根上にカシ類を交えたモミ林が顕著な森林景観を作っている。比較的若い林分とみられるが、密度や規模において静岡県でも有数のものである。
3 蕎麦粒山のブナ林 蕎麦粒山から山犬段にかけての一帯にはブナの巨木が繁り、原生的な世界が広がっている。ウラジロモミやツガの針葉樹が混交し、シナノキ、オオイタヤメイゲツなども多く、南アルプスらしい混交林としてのブナ林となっている。
4 蕎麦粒山のシロヤシオ群落 蕎麦粒山から鋸山へ至る稜線部はトウヒ、シナノキ、ブナ、カエデ類の多い原生林で被われており、林内には白い花を咲かせるシロヤシオの巨木が群生し、開花期はすばらしい山岳風景となる。
5 大無間山のコメツガ群落 大無間山の西側稜線に広がるコメツガの純林で、コメツガの巨大なものは胸高直径1mを超える。
6 不動岳のトウヒ林 不動岳山頂部の亜高山帯には、トウヒの原生林が純林を成して繁っている。その中でも不動岳山頂北側にある平坦地のトウヒ林は、樹高30mに達する巨木群で、すばらしい森林景観をつくっている。
7 大井川源流部原生自然環境保全地域の森林植生 本州で唯一の原生自然環境調査保全地域に指定されている地域で大井川源流部に位置する。面積は1,115haで、太平洋岸における山地帯から高山帯に至る典型的な垂直分布が見られる。広大な寸又川流域の原生林の一角をなす貴重なものとして厳重な保護が図られている。
8 千石平の針広混交林 広い面積を有する平坦な尾根にシラビソ、トウヒなどの常緑針葉樹を主とし、ダケカンバ、ブナなどの落葉広葉樹が混生する原生林が繁っている。樹木はいずれも巨木である。
9 光岳、中ノ尾根山学術参考保護林(*2) 光岳から寸又川右岸の2,000mを超える山々を連ねる一帯で、大井川源流部原生自然環境保全地域を含む。自然が原生的な状態で残っている地域で、山地帯から高山帯に至る典型的な垂直分布が残されている。
10 光岳のハイマツ群落 高山帯の常に強風が吹き付ける風衝地に形成するマツ科の匍匐(ほふく)性常緑針葉樹ハイマツの群落で、イザルガ岳(静岡市)を含む光岳一帯に成立し、ハイマツの群落として南限にあたる。
11 大井神社
(地名)
旧地名保育園向かい側の小高い丘の社寺林。樹高15〜20m、胸高直径30cm程のスギ・ヒノキの植林で、神殿の近くには比較的太い(胸高直径30〜60cm)スギが多い。西斜面にはシイが多い。
12 八幡神社
(久野脇)
塩郷堰堤近くの小高い丘にある社寺林。スギ、ヒノキの植林が多い。樹高は20m前後で、胸高直径は20〜30cmのものが多い。
13 八幡神社
(下泉)
下泉にある社寺林で、樹高20〜25m、胸高直径20〜30cm程のスギが広く植林されている。神殿と石段の近くには胸高直径60〜70cmのスギがある。
14 八幡宮 下長尾にある社寺林で、神殿の横から後方には樹高25〜30mのスギが10本ほど立ち、スギのほかはヒノキ、クスノキなどが登り斜面に密生している。神殿に向かって右側後方には竹林がある。
15 八幡神社
(上長尾)
上長尾にある社寺林で、全域スギ、ヒノキの植林である。神殿の前には樹高20〜25mのスギが間隔をおいて20〜25本立っている。神殿の後方登り斜面の林は密生している。
16 田野口津島神社 全域スギの植林地で、神殿後方の登り斜面には細いスギが密生しているが、神殿の周囲には大木が10本前後ある。また、神殿に向かって右後方に県指定天然記念物の五本杉がある。
17 水川神社 山腹にあり、茶畑の間を通って神社の林へと続く。鳥居から神殿までの石段の両側はスギ、ヒノキの植林で本数は多くはないが、どの木も高い(樹高25〜30m)。
18 徳山神社 神殿に向かって左側にゆるい下り斜面があり、全域スギの植林地である。神殿と広場の周囲を大きなスギ(樹高30m)が囲んでいる。
19 大泉院 一部スギが植えられているが、スダジイ、アラカシ、クスノキ、イチイガシ、ケヤキ、カヤ、ツブラジイを中心とした常緑広葉樹林である。山門の右端に樹齢400年以上という大きなスギ(俗称:天狗杉)がある。
20 八幡神社
(元藤川)
万世橋を渡り、すぐ南の小高い丘に繁る社寺林。特に大きな木はなく太いものでも胸高直径30〜40cmであるが、種類は雑多でスギ、ヒノキ、ツガ、スダジイ、ウラジロガシ、ツブラジイ、モミ、ウラジロモミなどが密生している。
21 大井神社
(奥泉)
奥泉の社寺林で、鳥居をくぐり石段を登る右側には竹林がある。左側にはカシ類が優占する樹高20〜25mの樹林で、アラカシ、イチイガシ、スギ、イヌシデなど種類が豊富である。神殿の前の開けた広場(中学校跡地)の周囲には桜が植えられている。
22 徳山浅間神社 神殿の背後の斜面全域にわたる樹高25〜30mのスギ、ヒノキの植林で、シイやアラカシも混生している。神殿の前の左右に2本のスギの巨木(県指定天然記念物)がある。
23 観天寺 本堂の背後は竹林で、それ以外はほとんどスギ植林である。スギ植林は樹高20〜30mに及び、本堂に登る石段の両側には樹齢200年程のスギが5〜10本ある。
24 稲荷神社 茶畑を前にし、山を背にした小高い丘にある社寺林。ヒノキ植林にやや大きなツクバネガシが混生する。林内にはアセビやミツバツツジなどツツジ科の樹木が優占し、林床にはミツバツツジの芽生えが多い。
25 徳谷神社 樹高25〜30mのスギ植林で、林床は植物の種類が非常に多く一面を覆っている。町指定史跡となっている小長谷城址がこの神社にあり、社寺林の中に本丸、二の丸の跡がある。
26 三宝神社 樹高25〜30mのスギ植林でツガもみられる。林内にはサカキ、アオキなどが密生している。鳥居をくぐると真正面にスギの大木(胸高直径1.3m)がある。
27 大井神社
(元藤川)
社殿を取り囲む樹高20m程のスギ植林で、スダジイ、ツクバネガシ、イチイガシ、アベマキ、アラカシ、ハリモミ、クスノキなどの常緑広葉樹が多い。
28 谺石神社 石段を登る両側にある樹高15m程のスギ、ヒノキ植林でツクバネガシが混生している。林内にはツクバネガシやツガの低木が多くみられる。
29 高山帯自然植生 現存植生図の高山帯自然植生。標高2,500m付近以上の高標高地に発達する植生で、本町では高山帯の風衝地で枝を横に這って生育するハイマツの低木林が存在する。
30 亜高山帯自然植生 現存植生図の亜高山帯自然植生。標高1,800〜2,500m付近に発達する植生で、本町ではシラビソやオオシラビソ、キタゴヨウなどの常緑針葉樹林が主体となっている。不安定な場所にはダケカンバ林が成立する。
31 山地帯自然植生 現存植生図の山地帯自然植生。標高800〜1,800m付近に発達する植生で、本町では山地帯自然植生を代表するブナ林がみられるが、ツガ林が主体をなしている。渓谷には小規模であるがシオジやトチノキなどの渓谷林がみられる。
32 低地帯自然植生 現存植生図の低地帯自然植生。標高200〜800m付近に発達する植生で、本町では低地帯の上部に発達するモミ林が多い。渓谷には小規模であるがケヤキやイロハモミジなどの渓谷林がみられる。
33 河辺自然植生 現存植生図の河辺自然植生。洪水や増水により常に不安定な立地条件にある河辺には冠水に強いヤナギなどの群落が発達する。本町では、河川敷にコゴメヤナギの高木林やツルヨシ草地がみられる。
34 二次林・二次草地 現存植生図の低地帯代償植生のうち、薪や肥料など様々な資源を得る場所として維持管理されてきたいわゆる雑木林やススキなどの草地。二次林や二次草地を生育地とし依存する植物が存在するが、生活様式の変化に伴い管理が放棄され、遷移の進行や開発によりこれらの植物の生育が脅かされている。
35 水田 現存植生図の耕作地のうちの水田。本来の目的は食料(米)生産であるが、保水・遊水機能、水質浄化機能、気候の緩和や大地の安定化に寄与し、水生植物や湿生植物の生育を支えている。しかし、稲作の放棄による草地化、埋め立て、水田の乾田化、農薬などにより、水生植物や湿生植物の生育が脅かされている。
36 渓谷の岩壁 接岨峡や寸又峡といった深い谷を刻む渓谷の岩壁は、高い空中湿度に生育する着生ラン、湿った岩場に生育する植物、洪水や乾燥に耐える渓流植物など、渓谷の岩壁特有の植物がみられる。
【資料:日本の重要な植物群落(東海版)T・U、静岡県の植物群落−静岡県の自然環境シリーズ、静岡県自然環境基本調査 社寺林調査報告書(中間報告)、自然環境情報GISデータ 第2-5回自然環境保全基礎調査・現存植生調査】
注)*1,2:旧保護林制度の名称。現在は、*1:植物群落保護林(梅地のアカマツ林)、*2:森林生態系保全地域(南アルプス南部光岳)・植物群落保護林(中ノ尾根山の森林)。

注目すべき植物群落および植生図
注目すべき植物群落および植生図

【資料:自然環境情報GISデータ 第2-5回自然環境保全基礎調査・現存植生調査】
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